大船渡野球部、歴史を変えた監督

この夏、日本中を騒がせた”大船渡問題”

 

3年生も引退して新チームが始まったいま、もう一度考えてみたいと思います。

 

選手だけではなく、僕たち監督やファンも考えなければならないポイントがあります。

 

まず僕が思ったことは、選手たちに対する"公平性"について。

 

佐々木の体を守って投げさせないなんて

「佐々木選手だけ守って不平等だろ!」とみんな思うでしょう。

 

でも、「甲子園いけなくてもいいです!」なんて決勝まで進んだ高校生が言えるのでしょうか?

 

選手のモチベーションもバラバラです。これは、甲子園出場があまりない公立高校が抱える大きな問題だと思います。強豪校よりももっと選手間の意識の差が出ます

 

甲子園を目指す選手、楽しく終えたい選手、さらに何となく野球をしている選手が実際いるのです。

 

こんな中で采配を全選手に理解させて、まとめあげるなんてことは、至難の業でしょう。

 

そこが指導側に立つ人にはしんどいところです。

 

試合後、様々なコメントがありました。

「佐々木に投げれるかどうか聞いたらどうだったの」

「他の選手にも、佐々木が投げるべきか聞くべきだったのでは?」など。

 

でも最善策は、選手たちに判断させることだったのでしょうか?

私は、そうは思いません。やはり"監督が判断"するべきだと考えるし、

今回の大船渡の監督は、高校野球を変える判断をしたと思います。

 

誰でも佐々木投手のような、スーパーエースが身近にいたら甲子園出場を夢見るし、

いけると思うのも仕方ない。

でも、甲子園出場と佐々木選手の未来を守ること、

どちらも選ぶことはできないのです。

 

この試合で、監督が選んだのは"佐々木選手の身体と未来"でした。

今までスーパースターを預かった監督は、誰も出来なかった。

にも関わらず、周りからのプレッシャー打ち勝ち、佐々木選手の類まれなる才能を

3年間守り抜いたのです!

大船渡の監督は、野球が変わろうとしている時代の第一人者でしょう!!

それなのに、監督一人が批判されている。

 

私はそのことがとてもかわいそうなことだと思います。

エースひとりに頼る文化をつくりあげてきたのは、

これまでの野球関係者たちが怠ってきたツケだからです。

 

この秋に考えても、やはり監督一人の責任では決してない、

そう思えます。

 

それに本来、これらは監督と選手の部活内での問題であって、

ほかの人たちが文句を言う筋合いも権利もないのではないかと思うのです。

 

これは誰にでもあると思うのですが、

野球をやってきた人なら監督に不満を持ったことがあるでしょう。

 

自分自身も現役時代は采配への文句がありました。

でも、その判断で勝たせてもらったこともあります。

 

そして、今ではその恩師に会うために毎年グランドに訪れています。

「あの判断、今なら理解できます、ありがとうございました」

 

今すぐは難しいと思いますが、

このような会話を交わす日が大船渡の監督・選手たちにも来て欲しいですね。